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映画をぶっ壊せ!!『ターミネーター2編』⑥:第二幕前半1(全10回)

このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。

全てのドラマは葛藤である

さて、5回もかけて状況設定の第一幕をぶっこわしてきた。
次の第二幕は「葛藤」がテーマ。そして第二幕は60分もの長丁場。ブログも前半と後半に分けてぶっ壊していこうと思う。

さて、シド・フィールドは葛藤について、次の言葉を繰り返し何度も何度も使ってる。
これがマジで重要。

「全てのドラマは葛藤である。葛藤なしではアクションは生まれない。アクションがなければ、キャラクターを作ることができない。キャラクターなしでは、ストーリーが生まれない。ストーリーがなければ、脚本は存在しない」

シド・フィールド著, 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと, フィルムアート社, 2009年, p.352

かくいう私もシナリオを勉強し始めたとき、最初に覚えたのがこの鉄則。
彼の言葉を頼りにたくさんシナリオコンクールに出したなー。そしてたくさん落ちたなー(遠い目)

第一幕でテーゼの世界(旧世界)を抜け出し、第二幕でアンチテーゼ(新しい世界)を経験し、新しい自分に変化していく。
しかし、人間は変化にはそう簡単に対応できるわけもなく。古い自分と新しい自分との間で「葛藤」を繰り返し、大きく成長していく。そんな過程を描くのが第二幕だ。

シナリオを書いたことがある人は分かると思うけど、第二幕が一番書くのが大変。ホントに難しい。なんせ、何を書いていいのかわからないから。しかも60分もあるし!

さあ、あなたは今映画のシナリオを考えている。すると、すぐにカッコいいオープニングイメージが頭に浮かんだ。さらにカッコいいラストシーンも思いついてしまった。自分は天才だと思うほどの最高のシーンだ。すぐにでも脚本を売り込めばハリウッドで映画化待ったなし。ある一つの問題を除いてね。それは、間を埋めるストーリーが全く思いついていないということだ。(あぁ思い出す、この無力感)

アンチテーゼ(新世界)のルール説明

T2の第二幕を見てみよう。

34分50秒〜

第一幕の1stPP(ファーストプロットポイント)で、ジョンがターミネーターの存在を目の当たりにし、自分の命が狙われていることを知るところから第二幕は始まる。
T-800に助けられたジョンは一度落ち着こうと、T-800を観察する。

ジョン「あんた、ターミネーターなんだろ?」

ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321

ジョンにとってこの事実はかなり衝撃。母親から聞いていた話はすべて本当だとここで分かる。母親が「頭のいかれた負け犬」ではないことを初めて知るんだ。

T-800はここで初めて自分の目的を明かす。未来のジョン自身が自分を守るためにT-800を送り込んだことをね。ようやくジョンははっきりとターミネーターが実在する世界を認識し、退屈だけど平和なテーゼの世界が文字通り崩壊する。知った以上、もう二度と古い世界には帰れない。母親を負け犬と呼ぶことももう無い。母親は世界で唯一、真実を語っていた人間だとわかったから。

このシーンのように第二幕に入ると、主人公が新しい世界に住む住人からその世界についてやそこでのルールを聞くことが間々ある。新しい世界には独自のルールがあり、それを守れないとたいていは死ぬ。古い世界とは全く違うルールが存在するため、生き残るためにはルールをまず知る必要があるんだね。

不朽の名作『オズの魔法使』(39)でいうところの、ドロシーがオズの国にやってきたときに北の魔女グリンダが、「黄色いレンガの道をたどってエメラルド・シティに行き、オズの魔法使いに会えば、カンザスへ戻してくれるだろう」と助言をしてくれたように。

オズの魔法使のポスター

神映画の『ショーシャンクの空に』(94)でいうところの、刑務所に入ったアンディが刑務主任のノートンから、「規則と聖書が全てのルールだ」と教えられるシーンがある。そのルールを守れなければその世界で生きることは叶わないことを明言する。それを破った者たちは悲惨な最期を迎えるのだ。

T2ではT-800がその説明役を担ってる。

ちなみに主人公が知らないこと=観客も知らないこと
だから、スクリーンの向こう側の人のためにも、主人公が代わりに聞いたり教えてもらったりするんだね。

それで、ジョンが入り込んだ世界についてT-800から明かされたことは、3つ。

  • ジョンを助けるために35年後のジョンがT-800を送り込んだこと
  • もう一体ジョンを殺すためにT-1000が送り込まれ、それが最新型だということ
  • ジョンの家はすでに危険だということ

これをもってジョンは生き残りをかけてT-1000から逃げなければいけないと、主人公のジョンは自覚する。

シーンの役割の実例

37分10秒〜

ジョンは危険な家に帰りたくても帰れない「葛藤」の中、嫌いな里親でもせめて警告をと家に電話をかけるシーン。なんでもないようなシーンだけど、「シーン」が果たす機能をしっかりと果たしている理想的なシーンとなってるので、紹介しよう。

ここで第三回のおさらい。シーンの役割を覚えてるかな?

すべてのシーンまたはシークエンスの目的は、ストーリーを前進させるか、登場人物に関する情報を明らかにすること

シド・フィールド著, 最高の映画を書くためにあなたが解決しなくてはならないこと, フィルムアート社, 2019年, p.362

ストーリーを前進させる。
ジョンが里親に電話し、実はすでに里親夫婦がT-1000によって殺され、帰る家が無いことを知る。

登場人物の情報を開示する。
上記の進行と同時に情報が開示されるアクションがふんだんに詰め込まれてる。

ジョンについて

嫌いな里親を心配して電話をかけるジョンの優しさが垣間見える。序盤では不良そのもので里親への嫌悪感を隠しもしていなかあったが、二人の身を案じる人間味あふれる優しさがある人物だということが分かる。

T-800について

ロボットらしく、公衆電話を壊して無理やり小銭を取り出す。さらに里親のジャネットが優しすぎるとジョンが違和感に気づくと、ジョンの声色を真似て誘導尋問を行う。(これは前作のターミネーターにも同じ機能がついてたね)

T-1000について

里親のジャネルに擬態する能力、そしてトッドを牛乳ごと貫いたナイフに変形する腕、そして殺人を躊躇しない残虐性。前作のT-800のような殺人マシーンの役割をT-1000がはっきりと観客に見せ、さらにはT-800よりも高性能だということを見せているんだね。

このように物語を前に進めるだけでは退屈になってしまうシーンに、人物たちの特徴を明らかにしながらシーンを動かす。この人物特性を見せることによって、人物に深みを与え、より感情移入できるようにしている。

というところで、今回は短めに終了。第二幕は長いからのんびりやっていこう。
ではまた。

映画は、みんな素晴らしい。

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