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映画をぶっ壊せ!!『ターミネーター2編』⑤:第一幕3(全10回)

このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。

物語の最後に起こること

前回は、第一幕における状況設定と人物紹介について見てきた。映画の前提を開始の23分ですべて詰め込み、観客の心をぐっと物語の中へ引き込む。こうして、観客と世界を共有し、感情移入の準備ができると、ようやく物語を大きく動かすことができるようになって、第二幕へと移っていくことができるんだ。

この第二幕に移るときに、必ず大きな「事件」が起きる。これが「プロットポイント」と呼ばれる瞬間だ。

と、ここでプロットポイントを説明する前に、また本題をそれていく話をしよう。

さて、一つ問題。
物語は始まりからその結末を経て、一体何が起こると思う?

観客は何を期待して映画館の席に2時間もじっと座っているだろうか?
物語の中心にいるのは主人公。そしてその主人公は物語を通して何をしているか?ぼーっと物語の世界を観光客のように訪ねてまわっているわけではもちろんないよね。常に物語の中心にいて、深く関わりながら、その物語を自ら進行させる役割を持っているんだ。その主人公の最後に何が起こるのか?そこに最初の問題の答えがあるんだ。

答えは、「変化」

かのシド・フィールドも、魅力的な登場人物に不可欠な要素の一つとして、
「何かしらの「変化」や変身を遂げること」と言ってる。

例えば、永遠の恋愛映画『プリティ・ウーマン』(90)で考えてみよう。
ストーリーは単純。ジュリア・ロバーツ扮する売春婦のヴィヴィアンとリチャード・ギア扮する実業家のエドワードが、職業への偏見や考え方の違いを乗り越えて結ばれるシンデレラストーリー。
しかしながら、本質は二人の変化を描くストーリーになってる。ヴィヴィアンは物語を通して、知識や教養、そして自信や自尊心を身に着け、自立していく。一方、エドワードも傲慢で冷徹なビジネスマンから相手を尊重する考えを身に着け、愛人扱いをしていたヴィヴィアンを一人の女性として愛することを決心する。
冒頭で売春婦と傲慢な実業家の二人を見せて、最後に変化した二人の姿を見せ、そのご褒美として二人は結ばれる。

また、主人公の変化の軌跡は、ジョーゼフ・キャンベルが提唱する「英雄の旅」、それを現代の映画製作用に実用化したクリストファー・ボグラー提唱の「英雄の旅の12のステージ」なんて呼んだりしてる。
ただ、この話をするとまた終わらなくなるので、また違う作品をぶっ壊したときにでも。

Joan Halifax – https://www.flickr.com/photos/upaya/196061673/, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=121372081による By Etan J. Tal – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36364577

話は戻って、T2。
第一幕は、状況設定と同時に、主人公が変化する前の世界を描く。(旧世界、テーゼとか呼ぶ)

T2にあてはめると、主要な登場人物の「テーゼ」(かっこいいのでこの呼び方を採用)は、

  • ジョン
    両親不在で不良生活を送っている。父親は死んでおり、母親は精神病院。家族の再生どころか家族がいない状態。義両親ともうまくいってない。
  • サラ
    自分が犯した罪により、警察病院に監禁されて、息子に会えない。
  • T-800
    完全なるマシーンとしてジョンを守りに来ているが、まだ会えていない。

プロットポイントとは

ここで、また「プロットポイント」の話に戻ろう。
この「プロットポイント」という言葉は、もうおなじみシド・フィールドが構成を説明するのによく使う言葉だ。以下が、その説明。

プロットポイントとは、アクションを起こさせ、物語を違う方向性に向かわせる事件やエピソードなどを指す。

シド・フィールド著, 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと, フィルムアート社, 2009年, p.352

プロットポイント自体は、映画の中に何個も存在する。物語を動かす事件は大小関係なくプロットポイントとなるんだ。プロットポイントは物語が色々と動く第二幕に多いのだけれど、序盤のT-800が未来から到着する冒頭のシーンも一つのプロットポイントになる。
中でも、特に大きな事件が起きるのが、第一幕と第二幕の間、第二幕と第三幕の間に来るプロットポイントだ。
それをそれぞれ、ファースト・プロットポイント(以下、1stPP)、セカンド・プロットポイント(以下、2ndPP)と呼ぶ。
※下記の図でいうと、赤バツの左側。ちょうど第一幕(ACT ONE)と第二幕(ACT TWO)の間に位置する。

シド・フィールドが提唱した三幕構成を表にしたイラスト。
Bratislav – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=25777267による

1stPPは、第一幕でテーゼ(旧世界)に住んでいる主人公が、アンチテーゼ(新世界)に足を踏み入れる瞬間となり、その分インパクトの大きい事件が起こる。通常はどの映画も20分〜30分の間に来る。
2ndPPの方は、後ほどの回で詳しく説明するけど、解決に向かう大きな出来事が起きたりする。

1stPPを理解するうえで、普及の名作、『スタンド・バイ・ミー』(86)がわかりやすいと思う。4人の少年たちが住んでいた小さな町(テーゼ)を、死体探しのために外の世界(アンチテーゼ)へ旅立つ。そこが1stPPとなる。(だいたい開始から14分のところ。映画自体が90分ほどのため第二幕に入るのが少し早いけど)
『オズの魔法使』(39)はビジュアル的にも変化させている。魔法の国オズに到着すると、画面がモノクロからカラーに変わる。

大抵の映画は1stPPでインパクトのあるシーンを持ってくることが多いんだ。大きな転換点なので、作り手としては、観客の心をぐっと掴むような劇的(ドラマチック)なシーンで第二幕に突入させたいから。

T2のプロットポイント

2450秒

T-800とT-1000がジョンをとうとう見つけ、追いかけるシークエンスの中にある。

見れば分かると思うんだけど、突如として大きい事件が起きるわけじゃない。事件を盛り上げる積み重ねはきっちり見せている。第一幕前半の人物紹介のシーンの間にも、2体のターミネーターがジョンを捜索するシーンがちょいちょい挟み込まれてる。これは1stPPへの布石と、退屈になりがち「状況設定」のシーンの連続を、本編のストーリーを少しずつ進行させることで間をつなぎ、緊張感を保つ役割をしているんだね。

さらに、追跡シークエンスに入る前、サラがいる警察病院では、医師のシルバーマンが監視のゆるい病棟に移し、息子に会わせるという約束を無かったことにして、サラの唯一の望みは絶たれてる。息子に会いたいのに会える希望もない。サラの葛藤は最大級になる状況を作りだしてるんだ。
この時点で、ターミネーターからジョンを守る者は誰もいなくなり、ジョンの外的欲求、「生き残って人類のリーダーになる」ってやつが絶体絶命のピンチになる。

第二幕に入るために、第一幕の世界にはもういられないような状況を作って、ドラマチックに移行できるよう、綿密にストーリーが練られているのがよくわかる。
テーゼの世界に残っても幸せに暮らせるんじゃない?と観客に思われたら、1stPPとしては不十分だと思っていい。

27:12〜

さて、該当のシーン。
詳しくは本編を見てほしいけれど、T-800とT-1000がジョンを追いかけるシーンが続き、とうとうジョンがT-800とT-1000にほぼ同時に追いつかれ、両者から銃を向けられる。
さあ、この時点ではジョンはどちらが敵か味方かわからない。どちらかというと警官に扮したT1000の方が味方になってくれそう。観客的にもT-800は前作では憎き敵だった。ジョンも観客も迷い、固まってしまう。
そこでT-800ことシュワちゃんが沈黙を破り、一言だけセリフを発する。

T-800「伏せろ

ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321

しびれる。シンプルかつ意図がしっかり伝わる。T-800は味方で、T-1000が敵であることがここで明らかになるんだ。
ジョンにとって、この一言で、平和だったテーゼ(旧世界)の日常から、ターミネーターのいるアンチテーゼ(新世界)に強制的に連れ込まれる。これがT2における、ファースト・プロットポイントだ。

一度この世界に足を踏み入れたら、基本的には元の世界には帰れない。日常は壊れ、新しい価値観で生きることを矯正されるんだ。さあ、ジョンは生き残れるのか?T-800はT-1000からジョンを守れるのか?そしてサラはどうなる?
観客は次にどうなるのか知りたくてたまらなくなる。

ここで、完全に第一幕がようやく終了だ。
第一幕は、本当に情報量が多い。さらに観客をつかむアクションシーンなどの見せ場が詰まりに詰まってる。だからこそ、第一幕は映画の面白さを決めるうえで、重要なパートなんだってことが理解できたんじゃないかな。

次回は第二幕をぶっ壊して、アンチテーゼの世界がどうなってるか詳しく見ていこう。
ではまた。

映画はみんな、素晴らしい。

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