このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。
さて、今回は前回の続き。
状況設定の後半をぶっ壊して中身を見てみよう。
第一幕:状況設定のつづき
サラ・コナー
14分〜
「あんな女、母さんなもんか!トッド!」
この直後に紹介されるのは、もう一人のあんな女こと、サラ・コナー。警察病院に入れられている。前作でターミネータープレス機で潰し、サイバーダイン社の工場を爆破しようとし、未来に来る戦争を力技で訴えた結果、逮捕され、狂人として入院させられ、肝心の守るべき息子にも会えない状況というのがすぐに分かる。
シルバーマン「次の患者は29歳の女性で、急性の分裂情緒障害と診断されている。通常の症状としては…強度の統合失調症と診断されています。鬱状態、不安、暴力体な無意識行動、被害妄想が挙げられるね 」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
現実のサラは、ピーター・シルバーマン医師から言われたい放題。やべえ患者として厳重に監視されている。
しかしながら肝心なのは、観客はサラがまともだと知っていること。サラは正しいのだと。これがサスペンスを生み、サラはこの状況をどう打破するんだろう?ジョンには会えるのだろうか?とサラを心配し、感情移入できるようになる。
さらにシルバーマンは、彼女の症状である妄想について触れる。
シルバーマン「彼女の妄想体系は興味深い。人間の姿をしたマシーン、ターミネーターが自分を殺しに時間を超えて送り込まれていたというのだ。さらに自分の子供の父親は自分を守るために遣わされた戦士で…やはり未来の人間だそうで…記憶が正しければ、確か2029年から来たという」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
これもさりげない状況説明の一つ。前作のおさらいと、未来の戦士であるカイル・リースが、ジョンの父親だと判明する。サラが自分で説明すると、不自然になるし、必然性がない。状況説明をセリフでやるには、こういった説明する必然性を出すことが大事なんだ。
すこしシーンは飛んで、18分30秒〜
ここでも状況説明は続く。サラは唯一真実を知るものとして、その役割を果たしている。
ここでは、被害妄想(真実)の内容とサラの目的を同時に見せるシーンとして作られている。
ここでは、サラとシルバーマンが、記録されたサラの映像を見ている。
録画のサラ「1997年8月29日になれば、あんたにも現実と思えるでしょうよ!」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
サラは一人孤独に真実を訴えているが、誰も信じてはくれない。
そんな自分をサラは、冷静に見つめ、全ては妄想だと認める。そして、サラの目的が明かされる。
サラ「6ヶ月の間に症状の回復が見られたら、監視のゆるい病棟へ移して面会も許してやるって、あなたは言ったわ。もう6ヶ月たったし、息子に会うのが、わたし楽しみで」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
観客はこれがサラの嘘だということは知っている。息子を守るために、真実を曲げたことを知る。
サラはなんとしてでも息子を守らなければならない。だがそれができない。それがサラが抱える「葛藤」だ。
このようにシーンのつなぎ目をできるだけ見せないようにし、説明シーンの連続で観客が飽きないように最新の注意を払いながら、緊張感を保ち続けるのだ。
すべてのシーンは、次のシーンへ導かれるべきだ。とシド・フィールドも言っている。
マイルス・ダイソン
21分55秒〜
最後に登場するは、サイバーダイン社のマイルス・ダイソン。開発者の彼は、若い助手に、「アレ」を使いたいと頼まれ、保管室へ向かう。そこで見たものは、ターミネーターの残骸、チップと金属製の腕だった。
やはりサラは正しく、サイバーダイン社がこっそりターミネーターを回収していたことが証明される。
ダイソンの「葛藤」は、彼の今取り組んでいる仕事そのものだ。まだこの時点では世界を滅ぼすとは気づいていない。だが、それを知ったとき、どうするのか決めなければならない。
上記の他にこのシーンではいくつか細かい仕掛けが施されてる。
ダイソンについて↓のセリフを見てほしい
ダイソン「わたしも前に一度その質問をした。なんて言われたと思う?訊くな、さ」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
ダイソンが新人にチップと腕の入手経路を尋ねられたときに答えたセリフだ。
これは、機械戦争の黒幕は彼ではなく、一介の開発者であり、純粋に技術開発に夢中になっていた結果だということを意味する。これは、のちのシーンのために、ダイソンが原因ではあるが、決して悪人ではないことを示す。
次に、ダイソンの3つの小さな行動についてポイントをおさえていきたい。1つ目は、保安庫にはいるために、キーカードをシュパッと通したこと、2つ目がチップの保管庫に入るために、警備員と2つの鍵を同時に回して開けたこと、警備員から家族は元気かと聞かれたことだ。なんてことないアクションであり、ダイソンは主役でもない。しかしながらこれらのアクションやセリフがのちのちの小さい伏線になっている。第二幕でダイソンの家族が登場し、サイバーダイン社に戻ってきたときにセキュリティを解除するために同じ行動を取るのだ。
映画という媒体において、どんなに小さい事柄でも、前置きなく新事実をいきなり明かされると、観客は混乱したり、騙された気分になる。だから、わざわざ一度見せておくのだ。これは偶然ではない。
意味のないシーンは一つもないと言ったけれど、映画は一つのセリフ、一つアクションには全て意味が込められている。それほどまでに映画というのは、無駄を極限まで削ぎ落とされ、わずかな凹凸も許されない金型職人のように磨かれて完成されたものなのだ。
本当の物語の始まり
23分30秒くらい
だいぶ今回は長くなったけれど、これで第一幕の状況設定はだいたい終わり。ぶっ壊した第一幕の中身を見れば、序盤は相当に情報が多く、中身がぎっしりだ。ここでストーリーの前提や行く先がセットされ、主要な登場人物が重要度の順番で紹介され、彼らの人となりや抱える問題が明らかになる。この綿密な下準備を終えて、ようやく物語を大きく動かすことができる。
次は、第二幕につながる大事な「プロットポイント」の部分をぶっ壊していこうと思う。
では、また次回で。
映画は、みんな素晴らしい。

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