このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。
第一幕〜ファースト・プロットポイントまで
第一幕も今回で最後だ。
ステージ6:試練、仲間、敵対者
24分41秒〜
無事に銀行の用事を済ませたあとは、「魔法の杖」をオリバンダーの店に買いに行くシーン。杖がハリーを選ぶ重要なシーンだ。
ハリーを選んだ杖は、不死鳥の羽で作られていて、店主のオリバンダーが意味深に「名前を言ってはいけないあの人」も同じ不死鳥の羽で作られた杖を持っていたと聞かされる。ここでは、何を言っているのかさっぱりなハリーだ。
ここで店主のオリバンダーが、未来を預言するようなセリフをハリーに言う。
ハリー「杖の持ち主は誰ですか?」
オリバンダー「お~、その名は口に出せん。杖は持ち主の魔法使いを選ぶ。その理由は定かではないが、だが、間違いなくあなたは何か偉大なことを成し遂げるだろう。ある意味では名前を言ってはいけないあの人も偉大なことをした。恐ろしい、だが、偉大なことを」
このセリフは、映画シリーズの根幹となる「テーマ」を明かしてる。それは本シリーズ①で語った自尊心の獲得ではなく、ハリーポッターシリーズ全体の共通の「テーマ」だ。
ハリーは偉大なことを成し遂げる。だけど、それは何を?どうやって?正義として?悪として?
ハリーがこれから対峙するであろう数々の試練を眼の前にしたとき、彼は、どんな選択していくか。そのために彼はどれほどの葛藤を抱えるのか。
全てのドラマは葛藤である。
葛藤なしでは、アクションは生まれない。アクションがなければ、キャラクターを作ることができない。キャラクターなしでは、ストーリーが生まれない。ストーリーがなければ、脚本は存在しない。
シド・フィールド著, 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと, フィルムアート社, 2009年, p.352
ちなみに、このシーンにおけるハリーの目的は、杖を買うこと。しかし、映画のシーンの目的は違う。それは「名前を言ってはいけないあの人」の名前を出すことだ。シリーズを通して、最大の敵として君臨することになる「名前を言ってはいけないあの人」がここで初めて存在が登場する。
ここで、「ヒーローズジャーニー」に戻ろう。ステージ1〜3を解説したけれど、次は少し飛んでステージ6の「試練、仲間、敵対者」だ。決して順番通りに来るわけじゃない。あくまで「指針」であって、入れ替えたって、飛ばしたって良いのだよ。さて、このステージではどんな事が起きるのか。
- 日常の世界
- 冒険への誘い
- 冒険への拒絶
- 賢者との出会い
- 第一関門突破
- 試練、仲間、敵対者
- 最も危険な場所への接近
- 最大の試練
- 報酬
- 帰路
- 復活
- 宝を持っての帰還
登場人物がお互いに知遇を得て、観客が彼らをもっと知ることになる<出会い>のシーンを設定するのに適している。このステージは、ヒーローが次のステージに備えて、力を蓄え情報を集めるためにある。(中略)
クリストファー・ボグラー著, 神話の法則 ライターズジャーニー, 愛育社, 2002, p.495
新しい世界に入れば、新しい出会いがある。宿敵だったり、仲間だったり。主人公は誰を信用して、誰を信用しないかを慎重に見極めながら、数々の試練を乗り越え、物語を進めていくステージだ。
ちなみに、ハグリッドも「ヘラルド」でありながら、「仲間」の一人でもある。
ここで出てくるのは「敵対者」だ。
敵対者とはストーリーに登場する悪者と敵対者と、彼らの手下の両方を意味している。
クリストファー・ボグラー著, 神話の法則 ライターズジャーニー, 愛育社, 2002, p.495
ここでは当然「名前を言ってはいけないあの人」のことだね。シリーズ通して、ハリーの最大の敵対者であり続けるラスボスだ。逆を言うと、敵対者にとってもヒーローの到来は、これからの壮絶な対決を誘引する引き金を引くことにもなる。お互いに存在を察知しながら、最終決戦に向けて物語が大きく動き出すことになるんだね。
アーキタイプ:シャドウ(影/悪者)
「敵対者」は、言葉の通りいわゆるライバルだったり敵役にあたるタイプだ。これがヴォル…「名前を言ってはいけないあの人」に相当する。ボグラーは以下のように定義してる。
シャドウ(影/悪者)として知られているアーキタイプは、暗黒面(自我の影の部分)のエネルギー、何かをタブーとして意識の底に押し込められた部分のエネルギーを表している。
クリストファー・ボグラー著, 神話の法則 ライターズジャーニー, 愛育社, 2002, p.495
シャドウとは主人公の影の部分、無意識の中で抑圧されている凶暴性などと言われている。
わかりやすく言うと、敵役というのは、ヒーローである主人公の中の「違う可能性」をキャラクターに投影しているんだ。心の奥底に棲まう悪意なんかを具現化したものだね。それを影という比喩で例えてる。
主人公であるヒーローは、その悪意を善意によって乗り越えることで、真のヒーローになるということを表している。
「名前を言ってはいけないあの人」も、あまりネタバレはしないけれど、それに近い存在としてハリーに常につきまとっている。ハリーはシリーズを通して、常に内なる悪魔に付きまとわれ、苦悩することになる。
それが、本作品の「敵対者」だ。
28分51秒〜
オリバンダーの店で、「名前を言ってはいけないあの人」のことを聞いたハリーは、居ても立ってもいられず、ハグリッドに詰め寄る。
ハリー「そいつがパパとママを殺したんだ。この(額の)傷をつけた奴が。そいつを知ってるね?知ってるんだね?」
ここから2分ちょっと、ハリーの身に起きたことをハグリッドが語るシーンが続く。これは、観客に「敵対者」の情報を与えるシーンでもある。ここで重要なのは、シリーズを通して最大の敵の基本情報を観客に端的に伝え、さらに敵の強さを理解して貰うこと。観客はそれを聞いて、恐れおののき、この映画がお子様向けのファンタジー映画じゃないと思わなければいけない。
明かされた情報というと、
名前は…ヴォルデモート(言ってやった!言ってやった!)。悪の道を行く者、立ち向かうものはすべて殺され、ハリーの両親も立ち向かったが殺されてしまった。その中で唯一生き残ったのが赤子だったハリーであり、ハリーがヴォルデモートを追い払ったこと、そのことがハリー・ポッターの名を世に知らしめた原因であること。その時にできた額の傷は呪いであること、そして当のヴォルデモートは死んだと言われているが、きっとどこかで生きているということ。これをフラッシュバックを交えながら明かされる。

ここで、ハグリッドが一旦退場。電車の切符だけ渡されて立ち去ってしまう。
例の「9と3/4番線」だ。
ここまでが第一幕。第一幕は「状況設定」。セットアップフェーズの完了だ。ハリーのこと、魔法世界のこと、ハリーと名前を言ってはいけないあの人との関係ついて。この大前提となる情報を映画の4分の1を占める30分も時間をかけて丁寧に観せる。それくらいに前提の情報は大事。
これで、物語の基本的な情報が観客たちにインプットされ、入念な準備を経て物語の本番となる第二幕を迎える。
ということで、第一幕をぶっ壊して見たけれど、いかがだっただろう。
次回の第二幕は、ようやくおなじみのキャラクターたちが登場する。
ぜひ次回も読んでくれたら嬉しい。
映画は、みんな素晴らしい。

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