このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。
さて、今回はマーティ・マクフライのヒーローズ・ジャーニーがどんなものなのか追っていこうと思う。
今日もバック・トゥ・ザ・フューチャーをぶっ壊せ!!始めます。
マーティのヒーローズ・ジャーニー
第一幕ででてくるステージは、全部で5つ。
- 日常の世界
- 冒険への誘い
- 冒険への拒絶
- 賢者との出会い
- 第一関門突破
三幕構成の第一幕と比べてみると、その構成がよく似てるのがわかる。
三幕構成の第一幕
- 状況設定 →日常の世界
- インサイティング・インシデント(きっかけの事件) →冒険への誘い・拒絶、賢者との出会い
- ファースト・プロットポイント →第一関門突破
世の中には、色々な構成を解説する本があるけれど、正直この2つを把握していれば、どれも大差がないと思ってる。本質的にはどれも同じことを言っている事が多い。
これをふまえて、映画をもう一度最初から見ていこう!(同じ説明はしないから我慢して!笑)
ステージ1:日常の世界
まず前回説明した、ドクの部屋の紹介からマーティの登場、そこから学校のシーンまでが、ステージ1:日常の世界だ。そこでは、この世界がどんな世界で、その世界の住人がどんな暮らしをしていて、どんな状況にいるかを映し出す。まだとんでもない事件が起こる前の世界線だ。
ステージ2:冒険への誘い
ステージ3:冒険への拒絶
次に、日常の世界のシーンの途中でかかってくるドクからの電話。これがステージ2:冒険への誘いだ。わかりやすくお誘いが来る。
ドクの声「(電話から)見つかってよかった。聞いてくれ、今夜1時15分にツインパインズモールで会えないか?私は大発明をしたんだ。けれども、アシスタントが必要なんだ」
それに対して、マーティは夜中に突然呼び出されたのもあって、返事に歯切れがない。これがステージ3:冒険への拒絶となる。
マーティ「…そうだね…覚えておくよ」
拒絶したわけではないけれど、明らかに冒険を面倒がっている様子が見て取れる。まあ、ドクの頼みが、まさかタイムトラベル実験だなんて思っていないわけで、周りからはマッドサイエンティスト扱いを受けているし、どうせろくでも無い実験か何かだろうと思っているかも知れない。ただ、ドクは友達だから無下にはできない。そんなところだね。
Re:ステージ1:日常の世界
再びステージ1。この映画の面白いところ。前回説明したように、この映画のヒーローはカタリストタイプ。自身が変化するのではなく、変化させることが得意なタイプ。だから、当然変化させられる対象が必要になってくる。それが今回はマーティの父親、ジョージ・マクフライだ。ジョージは映画的には脇役だけれども、物語的には紛うことなき主人公だ。そんなジョージの日常世界と彼の問題点を見せる。ジョージはあまりにも気弱で自信がなく、ビフの言いなり、もはや奴隷に近い存在だ。ドクの教えである「為せば成る。何事も」からは一番遠いところにいるような人物だ。
この時点でステージ3まで進んだ。次に、三幕構成的に、ファースト・プロットポイントと呼ばれる第一幕で一番盛り上がるところだ。
ドクの大発明
17分28秒〜
ステージ4:賢者との出会い
マーティはすっかりドクとの約束を忘れて、ぐっすり寝ていたところに、ドクからの電話。二回目の冒険の誘いだ。高校生を夜中に呼び出す大人もどうかと思うけど、とにかくマーティはドクのために「ツイン・パインズ・モール(のちのローン・パイン・モール)」に向かう。
そこで、マーティが最初に出会うのは、ドクではなく、この映画の影の主人公デロリアンだ。
まったくの余談だけど、つい先日、近所のイオンの駐車場でデロリアンを見た。助手席にホバーボードも乗せられていて、感動した覚えがある。今でも愛されてる映画ってホントにすごい。
そんなデロリアンから降りてきたのが、ドクター・エメット・ブラウン。通称ドクだ。彼は、シリーズを通して、マーティの保護者のような役割を果たしている。一見マッドサイエンティストで非常識な見た目をしているが、性格は至極まっとう。道を外れそうになるマーティを軌道修正してあげている。まさに「賢者」というアーキタイプを背負っている。
そんなドクが、マーティにカメラを回させて、実験の一部始終を記録させる。第一幕の山場、お楽しみタイムだ。デロリアンのタイムスリップ実験で観客の度肝を抜く。
そのあと、ドクがデロリアンの仕組みを説明していくんだけど、マーティに説明するだけの事務的なシーンではなく、実験記録として見せることで、説明する納得性みたいなのを持たせている。
一連のシーンで、重要な情報は以下の通り。これらが後のシーンの重要な伏線にもなっている。
- タイムトラベルができる車デロリアン
- 時間のセットの仕方(マーティ自身が扱えるように)
- タイムトラベルを思いついた日付と、その時の出来事
- Y型の次元転移装置
- 必要電力が1.21ジゴワットであること
- リビアのテロリストを騙してプルトニウムを手に入れたこと
それを一通り終わらせたら、ここで状況設定としてのシーンはようやく終わり。ここから本当の物語が始まる。マーティが過去にタイムトラベルする時がやってくる。
ステージ5:第一関門突破とファーストプロットポイント
28分37秒〜
きっかけは、ドクのペットのアインシュタイン。アインシュタインが異変に気づき、二人が視線をそちらにやると、ツッコミどころ満載のリビアのテロリストがわかりやすく襲ってくる。
そんなテロリストたちに追い詰められたドクは、銃で撃たれてしまう。マーティはショックを受ける暇もなく、自分もテロリストに追われる。必死で逃げるマーティ。とっさにデロリアンに乗り込み、アクセル全開で逃げる。そのうちに時速88マイルに到達し、タイムトラベルが発生。現代である85年からデロリアンごと消え去ってしまうのだった。
これがステージ5:第一関門突破であると同時に、第二幕への移行の合図であるファースト・プロットポイントでもあるんだね。
ここから、マーティはスペシャル・ワールドに入り込み、問題を解決しない限り、元いた世界には二度と戻ってこれない。過去からバック・トゥ・ザ・フューチャーするためには、前段で提起しているマーティやジョージが抱える問題を解決しなければならないのだ。それがこの映画の目的であり、現代に戻ってこられるという行為は、その報酬だ。その大事なスタートでもあり、第一関門がデロリアンに乗り込み、過去にタイムスリップすることなんだね。
ここで、一つのアーキタイプを紹介する。
シュレスホールド・ガーディアン
学校で習わない英単語だけども、要するに「門番」という意味だ。
新しい世界への入り口は門番がいて、入る価値のない者を仁王立ちで中に入れないようにしている。
クリストファー・ボグラー著, 神話の法則 ライターズジャーニー, 愛育社, 2002, p.495
新しい世界にふさわしい人物かどうか、門番がテストをする。BTTFで言うところのリビアのテロリストがそれに該当する。この時点では、ヒーローたちは真っ向勝負はあまりしない。とりあえず門をくぐるために、欺いたり、逃げたり、時には懐柔したりしながら門を突破しようとする。マーティも「逃げる」という選択肢を取っている。
他の映画の場合を見てみよう。
『インターステラー』では、第一関門で宇宙に旅立とうとするクーパーは、門番であるマーフィの必死の説得にもかかわらず、娘に必ず帰ると約束(懐柔)して、旅立つ。
『スタンド・バイ・ミー』では、死体探しの旅の直前、門番として登場する町の不良のエースに絡まれるが、抵抗すること無く謝罪をすることでその場をやり過ごす。
彼らの目的は、変化を拒絶するものの役目がそれであり、本気で変わることを決意しているかをテストしているのだ。ヒーローに対しての覚悟を求めていることが多い。マーティの場合はそうせざるを得ない状況ではあるが、生きるという覚悟が第一関門を突破させたのかもしれない。
といったわけで、第一幕は終わり。その役割はおわかりいただけただろうか。全てはスペシャル・ワールド入るための助走だ。マーティも無事新しい世界へ飛び込んでいった。
次回は、第二幕。スペシャルワールドへ突入だ。そんな第二幕を徹底的にぶっ壊していこう。
第二幕の役割は覚えてるかな?三幕構成的には「葛藤」であり、ヒーローズ・ジャーニー的には「試練」だ。
また読んでくださると本当に嬉しい。
映画は、みんな素晴らしい。

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