このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。
第二幕後半の前半をぶっ壊せ!!
4つのシークエンス
1時間1分〜
ようやく映画も後半戦だ。時間は1時間1分を過ぎたあたりから始まる。
このパートは、全部で4つのシークエンスで構成されている。
世間の一般的な映画は、第二幕の後半部分は前半よりも比較的時間を長く取ることが多い。なぜなら第三幕の「解決」に向けて、人物を深く掘り下げながら、主人公が持つ葛藤を解決するための試練をクリアしていかなければならないから。
構成としては、第二幕後半の中でもさらに前後半に分かれ、2つのシークエンスで物語が進む場合が非常に多い。
そこでいうとT2は4つ。2時間映画にしてはかなり多い。内容は以下の通り。
- ガソリンスタンドでの休憩
- エンリケから武器を回収
- サラによるダイソン邸襲撃
- サイバーダイン社襲撃
これだけのシークエンスを詰め込んでいるので、第二幕後半はたっぷり45分間もの時間を使う。第三幕の入口がだいたい1時間45分くらいに設定されてる。
忙しい構成に見えるけど、実際に忙しい。しかし飽きさせないよう慎重に配置している。
役割を簡単に説明すると、1のガソリンスタンドのシークエンスと2のエンリケとのシークエンス。ここは休憩パートだ。第二幕前半で、ジェットコースターばりのアクションシーンが続き、観客も少しお疲れ気味。そんな観客に休憩してもらうために静かなドラマシーンを配置。ラストの山場に向けて十分に体力を回復してもらう。
今回は1と2をぶっ壊していこう。
1.ガソリンスタンドでの休憩シークエンス
前段で説明した通り、ここは休憩パート。アクションはいったんお休みだ。
個人間の内的な葛藤(心の中、内面に抱える問題)を見せるシーンを配置してる。
第三幕で闘うであろうT-1000は、3人が力を合わせないと決して勝てる相手ではない。3人の間にわだかまりがあるうちは強大な敵に太刀打ちできない。特にジョンとサラの親子関係、サラのT-800への不審だ。
T-1000から逃げ出した3人。
逃げる車の中で、ジョンは母との再会を喜び、ハグをする。しかしサラは自分を助けに来た息子にハグもキスもせず、お礼すら言わず、逆に助けに来たことを咎める。
サラ「あなたはとても大切な人間なのよ 」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
前回最後に説明した、「見せかけの勝利」の実態がここで明らかになる。
サラは母親としてではなく、未来の戦士として大事なんだと強く諭す。サラは息子に対する愛情表現ができず、サラとジョンは劇的な再会をしたものの、親子としてはまだ不完全な状態だ。そんな状態を悲しむジョンは涙を流す。
T-800はジョンの涙に反応する。
T-800「目をどうした? 」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
人間が泣く理由を理解できないT-800は、ただのマシーンだということを強調する。
ここでは、T-800が人間のことを理解しているかどうかを、観客にわかりやすく見せるために、泣くという人間特有の感情を物差しにしてる。T-800が人間になった瞬間を見逃さないよう、わかりやすくしているんだね。
なぜそんな設定をしたかというと、次のシーンでわかる。一夜を明かすために廃墟となったガソリンスタンドに避難したとき、T-800に自己学習機能が備わっていることが分かるんだ。
ジョン「プログラムされてる以外のことを学べるの?いろいろ学んで人間にもっと近づくことが?」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
T-800「俺のコンピューターは無限にものを学ぶ。接触すればするほど人間のことも 」
※T2完全版だと自己学習機能のスイッチをジョンが入れ、サラがT-800のチップを一度壊そうとしたりするシーンが追加されているが、劇場公開版では諸々カットされ、そういった機能が備わっているということになってる。
まだT-800を信用できないサラ。外を警戒するT-800を見張るように、じっと見つめている。
(ここで吸うタバコがかっこよすぎ)
こうして、それぞれの葛藤が解決していないことを観客に知らせる。解決しなければならない問題を提示しているんだね。
この直後から、ジョンのT-800への人間講座がはじまる。ジョンは決してT-800をロボットとして扱わず、若者らしい人間らしさを教えていく。行儀の悪いスラングや車のキーの隠し場所など、人間に近づけるように色々なことを学習させていく。同時に二人の信頼関係が深まっていくのがわかる。
ジョンが子供が銃で遊んでいるのを見て、自ら破滅を呼んだ人間は愚かだとつぶやき、観客に本筋を忘れさせないようにリマインドさせる。
それに対してT-800が強烈な皮肉で返す。
T-800「事故破壊は人間の本性だ」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
そして最後に、サラがT-800からターミネーターの生みの親である、サイバーダイン社のマイルズ・ダイソンについて情報を得る。第二幕の大きな流れを作るきっかけをここで作っておく。
サラ「すべて知りたいわ。どんな人相をしているか。どこに住んでるか。何もかもよ」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
2.エンリケから武器を回収シークエンス
1時間9分〜
サラの指示の元、昔の友人であるエンリケのところに預けた武器を回収しに来る。来たるべき戦いの準備だ。
ここでは、ジョンとT-800の会話に重きを置いている。ジョンは機械としてではなく人間として接し、T-800に生い立ちなどを語るなど、T-800に心を開いている様子が映し出されている。観客にも二人の信頼関係が深まっていくのがよくわかり、より感情移入ができるように仕向けられている。
ここでT-800は再度人間が泣く理由を聞くが、まだ意味は理解できていない。
二人の関係を丁寧に時間をかけて十分にみせたあとに重要なサラのシーンが来る。
サラは、二人を遠くから見つめている。そして、重要な悟りの瞬間が来る。
サラの声「機械とたわむれるジョンを見ていて、わたしは突然理解した。ターミネーターは片時もあの子から離れない…。(中略)この機械だけが父親の役目を果たせる存在だ。この狂った世界で、それは全く正気の選択だった 」
ジェームズ・キャメロン&ウィリアム・ウィッシャー著, コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
サラは、皮肉にもジョンの父親カイルの命を奪ったT-800こそが信頼できる父親だと、ふと理解する。
今まで誰も味方もおらず、孤独にジョンを守っていたサラにとって、強力な味方であり、ジョンを守る父親ができたと感じる。
ここでジョンが失っていた、父親が見つかる。それは人間ではなく機械ではあるが、どんな人間よりも信頼がおける、ジョンを命がけで守る父親だ。
第一幕で触れたこの映画の本当のテーマ、「家族の再生」が半分完了だ。そして残りの半分、母親とのわだかまりはまだ未解決。
サラはジョンを任せられる存在が見つかったことで、少しの安堵と、今までの疲れもあってサラは眠ってしまう。
ここで2のシークエンスが終わる。
この2つのシークエンスは、アクションシーンを控え、キャラクターにフォーカスしたドラマパートを集約させている。そうすることでキャラクターへの理解が深まり、感情移入のレベルがより深くなっていく。
加えて、ここで各キャラクターの内的葛藤を解決させておくことで、観客はあの問題って結局どうなったんだろう?という疑問を持つことなく、クライマックスに向かっていく激しいアクションパートを集中して観ることができる。
このドラマパートの完成度の高さが、この映画をただのアクション映画じゃ収まらないデキになってるんだ。
といったところで、今日はここまで。
次回は残りの2つのシークエンスを壊していこう。ではまた。
映画は、みんなすばらしい。

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