このブログを読む前に一つだけ。思いっきりネタバレします。
『インターステラー』第一幕をぶっ壊せ!!
今回は、ブレイク・スナイダー氏の『SAVE THE CATの法則』を参考にぶっ壊していく。
(補足)
ブレイク・スナイダー氏は、ハリウッドで売れる脚本を書こう!をテーマに本を書いているので、物語の細かい分析というよりも、売れる脚本を書くためにはどうするかということを基軸においているので、このブログもそういった書き方で進めていこうと思う。
ログライン
まず、新しい映画について知ったときに、必ず思う疑問がある。それは、
「どんな映画?」
この質問だ。その疑問は、当然観に行く私達が最初に思うことで、その疑問に応えるべく、配給会社は予告編だったり、HPだったり、たくさんのマーケティング活動をして、観客にアピールする。
インターステラーみたいな大作映画だって、最初は企画を誰かに持ち込んだはずだ。その時に、製作会社のお偉いさんは、当然聞いたはずだ。「どんな映画?」って。
クリストファー・ノーランだったら、「まあ、キミが言うなら…」ってなりそうだけど、全員がそうじゃない。製作費を出してもらうため、脚本を買い取ってもらうために、まず最初の大きな壁は、脚本のページを開いて読んでもらうことだ。
そのために、スナイダー氏は「ログライン」を作成することを提唱している。
「どんな映画なの?」の質問に、もしも一行ですばやく、簡潔に、独創的に答えられたら、相手は必ず関心を持つ」
ブレイク・スナイダー著, SAVE THE CATの法則, フィルムアート社, 2010年, p259
単にストーリーを1行で無理やりまとめろというのではなく、4つの要素を入れることが必要だと言っている。
- 皮肉(つかみの部分)
- イメージの広がり(映画の全体像が見えるか)
- 観客(性別・年代など)
- 製作費(低予算か、超大作か)
これらをイメージできることが、相手に短時間で伝えるためには非常に大事な要素だと言っている。
じゃあ、試しに『インターステラー』でログラインを書いてみよう。
「地球が滅びゆく未来、元宇宙飛行士の男が、人類が生存可能な新しい星を探すため、幼い娘の制止を振り切って宇宙の彼方へと旅立つ」
完璧ではないだろうけれど、こんな感じだ。
- 皮肉…大切な幼い娘に止められてもいかなければならないという状況
- イメージの広がり…宇宙を旅する壮大な物語だとイメージできる
- 観客…SF映画で、父と娘の話と想像がつくので、ファミリー向け、あるいは全世代向け
- 製作費…宇宙を旅するという壮大なスケールをイメージするので、莫大な予算が必要
実際に脚本を書いたジョナサン・ノーランがこんなログラインを作ったかどうかは不明だけど、映画を理解するうえで、このログラインが物語の「核」になっていることは間違いない。

このファイルの派生元: Jonathan Nolan 2.jpg:, CC 表示 2.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19754854による
この映画は物理や科学の話がたくさん出てきていて、なかなか理解するのに難しい。ただ、このログラインを前提に、以下の2つのポイントを見るだけで十分理解できる。
「人類は新たな星を見つけられるのか、そして父は娘との約束を果たし、帰還できるのか」
この2点を押さえれば、難しい物理学や小難しいセリフ、複雑なストーリーなんて気にしなくていい。上の2点が解決するかしないかをみてるだけで、十分にこの映画を楽しめる。
主人公について
次に、主人公についてみてみる。インターステラーの主人公はもちろん「ジョセフ・クーパー」だ
ログラインだけでなく、どんな主人公を置くかについても、重要度はかなり高い。
映画はすべて主人公についてのストーリーであるから、観客が注目したり、共感したり、応援したくなる主人公、しかも映画のテーマを観客に伝える主人公が一人か二人は必要なのである。
ブレイク・スナイダー著, SAVE THE CATの法則, フィルムアート社, 2010年, p259
魅力的な主人公になるための3つの条件がある。
- 設定された状況の中で一番葛藤する
- 感情が変化するのに一番時間がかかる
- 楽しんでもらえる客層の幅が一番広い!
『インターステラー』のクーパーを見てみると、大体当てはまってる。
クーパーは、娘との約束を守ることと、人類の新天地を探すことの間で終始葛藤している。それを最後の最後でようやく自身を犠牲にして人類を救う覚悟(感情の変化)が起こる。そして、楽しんでもらえる客層の幅が一番広いのはもう少し若者だったりするけれど、父親という設定が多くの観客の感情移入を誘っている。これは、父親という存在は大抵の人にとって身近で、気持ちが入りやすいからだ。
主人公の動機
最後に、その主人公の動機だ。これが観客の共感を呼ぶ大きなポイントだ。
原始的、原始的、原始的!
ブレイク・スナイダー著, SAVE THE CATの法則, フィルムアート社, 2010年, p259
本の中で、何度も強調しているこの言葉。要するに、動機はより純粋なものがよいと言っている。それは、生き延びること、飢えに打ち勝つこと、セックスすること、愛するものを守ること、死の恐怖に打ち勝つことなど、人間の根底にある欲求を動機にするほうが、誰しもが理解でき、共感しやすいという仕組みだ。
クーパーの動機もシンプル。愛するものを守ること。
とってもシンプルで理解しやすい動機だ。たいていの人たちが理解できるこの感情を物語の中心に、クーパーは最後まで奮闘していく。あとの設定は、映画を装飾する飾りでしかない。ブログでも何度か言っているように、中心を通る芯が太くしっかりしている映画こそ面白い映画の可能性が高くなっていく。これは間違いない。
最後に、主人公を創りたいみんなのために、これだけ守れば間違いないってルールをまとめて教えてくれる。
- 共感できる人物
- 学ぶことのある人物
- 応援したくなる人物
- 最後に勝つ価値のある人物
- 原始的でシンプルな動機があり、その動機に納得できる人物
言うのは易し、創るのは難し。ってやつだけど。クーパーを見ると、やっぱりあてはまる。他の映画の主人公を見ても、やっぱりあてはまってることが多い。ちょっとだけ見てみよう。
ジョセフ・クーパー(『インターステラー』より)…
妻を失い、男手一つで二人の子どもを育てる父親(共感)が、滅びゆく地球から人類を救うため(原始的な動機)に、娘に必ず帰ると約束をし(応援したくなる)、様々なものを犠牲にしながら(学び)、新天地を探す(最後に勝つ価値のある)。

ハリー・ポッター(『ハリー・ポッターと賢者の石』より)…
不遇な境遇の小学生(共感)が、魔法と勇気で困難を乗り越え(学び)、過酷な状況でも決して諦めず(応援)、悪の権化のヴォルデモートから生き残るため(原始的な動機)に奮闘(勝つ価値)する。

ジョン・コナー(『ターミネーター2』より)…
両親の愛に飢えた悪ガキ(共感)が、ターミネーターやサラに命の大切さを教え(学び)、人類の未来のリーダーになる使命を持ち(最後に勝つ価値がある)、命を脅かすターミネーターから生き残ろうと懸命になる(原始的な動機&応援したくなる)。

コンプリート・スクリーンプレイ「ターミネータ−2」, 1992年, p.321
物語も人物の設定も全く違うけれど、物語の主人公にはかなり多くの共通点があることがわかる。ジョセフ・クーパーもハリー・ポッターもジョン・コナーも主人公が持つ要素はほぼ同じだということだ。
というわけで、いつも通り、なかなか本編に入らなかったけれど、インターステラーの物語のポイントと主人公について理解ができたと思う。ということで、次回は本編に入っていく。
ではまた次回!
映画は、みんな素晴らしい。

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